名古屋スケッチ【小酒井不木】

名古屋スケッチは小酒井不木氏による小説作品で、昭和にはいったばかりの名古屋が舞台となっています。
今現在名古屋に住んでいる方にはなじみの地名が沢山出てきますし、ノスタルジックな想いにふけることもできるでしょう。

偉大な人物

小酒井不木は随筆家であり小説家、また翻訳家でもあるという文字通りの文人です。
また、東北帝国大学の教授であり医学博士という肩書も持っていた大人物ですし、当時は生理学における世界的な権威として知られていました。

様々な作品をこれまで世に送り続けてきた偉大なる作家ですが、フランスの作家モーリス・ルヴェルを愛好していたということもあり作風が似ていると評価されることもあります。
モーリス・ルヴェル氏の作品は陰惨かつ冷酷な表現の作品が多かったのですが、確かに小酒井氏の作品にも共通する部分は沢山見受けられます。
小酒井氏はもともと愛知県出身の作家で、現在の蟹江町で生まれ育ちました。
そんな彼に関するエピソードとして有名なものにはあの江戸川乱歩に関する逸話があります。

後に大作家として活躍することになる江戸川乱歩が作品を森下雨村に送った際、その作品の感想や判定を小酒井氏に依頼したと言います。
小酒井氏はその作品を絶賛し、これが決定打となり小説家江戸川乱歩が世に誕生したのです。
つまり、あの江戸川乱歩が大作家として活躍するようになった背景には小酒井氏の鶴の一声があったと言っても過言ではないでしょう。

名古屋スケッチ

小酒井氏自身もう故人となっていますし、名古屋スケッチも相当古い作品です。
しかし、この作品には古さをまったく感じさせないパワーすら感じてしまうという方は少なくありません。

昭和の混乱期における名古屋の様子をしっかりと描写していますし、今の名古屋市を知っている方ならノスタルジックな想いにふけりながら一気に読むことができるでしょう。
古書店などでは比較的安価で販売されていると思いますし、電子書籍版も簡単に手に入れることができますから、一度彼の作品を読んでみたいと感じている方が最初の一冊として選ぶにも最適な本かもしれません。

表現の仕方なども現在の作家たちとは大きく異なる部分がありますし、色々な意味で新鮮さがあります。
読み終わったあとには何とも言えぬ充実感も感じられるのではないでしょうか。
彼の作品はこれ以外にも沢山ありますが、その中でもまず最初に読んでいただきたい一冊であると言えるでしょう。
特に愛知県在住の方なら是非手に取ってみてください。

また、彼が愛好していたフランス作家モーリス氏の作風が好きという方も楽しめる思います。
もちろん、この作品ではそこまで陰惨かつ冷酷な表現は出てきませんが、至るところでテイストは味わえるでしょう。